ベイジュのお仕事

「本の歴史と未来」をまとめようと思ったら、大きな沼が広がっていた話

2022年にベイジュがお手伝いした、小学館のドラえもん探究ワールド「本の歴史と未来」は、5000年前から今に至るまでの本の歴史をわかりやすく解説した1冊。内容についてはありがたいことに、ダ・ヴィンチさんで詳細に紹介されております!こちらをチェック!! https://ddnavi.com/review/1073614/a/

…ということで、役に立たないのでおなじみベイジュブログでは、制作スタッフがドはまりした近所の沼について語ってみたいと思います。

 

我々も出版業界の片隅に生きるものですから、本が好き。そして、本の仕様や本関連の書籍も相当数所有しております。みんな大好き「デザインのひきだし」やら、DTP検定の教科書やら、社内の本棚にギュウギュウと詰まっているんです。でも、いざ本を1冊まとめようと思うと……全然足りないんです。小学生向けのはずなのに、1pまとめるごとに「あの情報がない」「この情報がない」「この図版が載っている本が欲しい」と右往左往。本の歴史は、(今の私たちが知ることのできる)人類の歴史とニアリーイコールなので、とても幅広いジャンルの資料が必要になるのです。そんな中、我々はふと当たり前のことに気がついたのです。

「そうだ、図書館に行けばいいんじゃない?」と。

 

弊社の事務所から最寄りの「千代田図書館」までは、歩いて5分程度。しかも22時まで開いています。資料まとめに煮詰まってもいたので、お散歩がてら行ってみましたら、お目当ての「出版・印刷各社の社史や技術書」などが、ドドーンと並んでいるではありませんか!!

出版にまつわる本棚

「出版」に関する資料を集めたコーナーです。

出版に関連する資料を一か所に収集し、出版の歴史や流れをまとめて閲覧できる環境を作ることにより、千代田区の地域産業である「出版」を知っていただくとともに、出版産業の活性化に繋げることを目的としています。(千代田区立図書館HPより)

https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/findbook/documents/publication/

……そうなのです。このあたりは本の街だけあって、印刷・出版・取次関係各社の資料がもりだくさんなんです。さらに印刷・出版の会社が本気で作った本は、どれもこれも美しく、大きく、ためになるのです。しかも無料で読めちゃう…。

 

やだ、楽しい…。

 

次々ページを繰っているうちにちょっとテンションがおかしくなり、「閲覧だけではあきたらん!」と購入してしまったのがこちら。

今回の本の監修もしてくださっている凸版印刷の印刷博物館さんの本

『印刷博物誌』

(ドラえもん風にお読みください)

「探究ワールド」と比べて、見て、この厚さ。ヤバくないですか…? そして中の情報量がとんでもなく…しかも、印刷が贅の極みを尽くしておりましてですね…。分かりますかねえ…??

写真は、あえてぼかして撮ってますが…ピントが合っているところの画像の、細かさ! 印刷には「線数」と呼ぶ、デジタルでいうところの解像度みたいなものがあるんですが、こういう細かーい線で描かれた絵が、ピシ―っと刷れるってことは、ねえ…(わかって業界人)。カラーの図版の数々も、とんでもない色再現性ですし、最終ページは仕様が書いてあるんです…。

なんという親切。(他のステキな本の作り手の方々も奥付にぜひ仕様を書いて! 全力で参考にするから!!!)本文1216p。端から端まで参考書としてありがたい。いまも時々ひらいてうっとりしています。ありがとう印刷博物誌。(いい買い物したわぁ…)

 

さらに、私たちを助けてくれたデジタル沼がこちら!

国立国会図書館デジタルコレクション

https://dl.ndl.go.jp/

NDLイメージバンク

https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/index.html

ルーブル美術館

https://www.louvre.fr/en/

メトロポリタン美術館

https://www.metmuseum.org/

などなど…気づいたら、世界中の博物館、美術館があれもこれも公開してくださっているのですよ。コロナ禍も、奇妙な形でこの「デジタルアーカイブの一挙公開」の後押しになっている気がします。(実はコロナがはじまったばかりのころは、「国立国会図書館の入場制限」が展覧会界隈のみなさんをざわつかせていました。私たちも、さまざまなものの初出が確認できず、めちゃくちゃ困ったんです)。最近では、国立国会図書館デジタルコレクションで祖父母の名前を検索すると結構な確率でヒットする…という遊びがインターネットを賑わせていましたね。各自治体の風土・歴史にまつわる資料を保存するのも図書館の大事なお仕事。それらがかなり電子化されているので、地方新聞にお名前が掲載されるレベルのご商売をされている方などは、わりとあっさりヒットします。もちろん、江戸時代の豆腐の調理方法も閲覧できますし、大昔の絵巻物も閲覧できます。これは……

なんという時間泥棒!!!!!

 

はあはあはあ…。

 

えーと、息を整えまして。

「探究ワールド 本の歴史と未来」の中にも記されていますが、こうして古今東西のものが自由に読める、閲覧できるというのは、とってもとってもありがたいことなのです。人間は争いごとを起こすとき必ず、本を燃やしたり、捨てたり、内容を改変したり、誰かがひとりじめしたりします。ずーっとその繰り返しです。うしろめたくなると、本当のことが書いてあるものを隠したくなるんでしょうね。

一方で、そうした荒波の中から本を守り通してくださる方も、必ず現れます。どんな時代にも「布教用」「保存用」「閲覧用」のオタクしぐさを貫いてきた方々がいたからこそ、私たちは過去の歴史を知ることができるのです。時には地面に埋めたり、地方に疎開させたり、補修をしたり。……ありがてえ、ありがてえよ。

ということで、大人こそたまには図書館に行ってみるのも良いのではないでしょうか。

最近の図書館はビックリする位おしゃれで、居心地も良く、子どもたちがしっかり本を読んだりお勉強をしています。襟をただされること必至ですヨ。

あと、「探究ワールド 本の歴史と未来」は、収録されたまんががどれも秀逸! 小学館の担当編集さんのセンスが光ります。『悪魔のパスポート』をくらったドラちゃんの顔とか、何度見ても笑っちゃうし、クリスチーネ剛田先生の、投稿者の鏡のような姿には胸をうたれます。「まんが本」としても、とってもお得です。ぜひお読みくださいませ。(宣伝)

 

 

 

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